C++には、Cと同様の変数をインクリメント・デクリメントする演算子(++、--)がある。
Cの時は、おもに整数,ポインタ変数などに対し、アセンブラ命令のインクリメント・デクリメントに相当する命令を直接記述することにより高速で効率の良いコード生成を可能としてきた。
C++では、オブジェクトの演算子をユーザーが定義できるようになったため、演算子の持つ特性と役割が大きく拡張された。
Cの時と同様に、レジスタ変数における前置きと後置きのコード生成を考える。
C++での記述 if (i++ < 10) Hoge(i) 生成されるアセンブラ mov ebx, eax inc eax cmp ebx, 10 jnc L1 push eax call Hoge L1:
C++での記述 if (++i < 11) Hoge(i);
生成されるアセンブラ inc eax cmp eax, 11 jnc L1 push eax call Hoge L1:
前置き++の場合のデメリット
命令が1つされる。(メモリの増加、速度の低下) レジスタ変数が1つ消費される。(最適化の効率低下) コンパイル時間の増加。(最適化の余地が多いため、最適化ルーチンのコストが増加する)
※実際には、この程度のコードならほとんどのコンパイラは最適化が可能なので、実行時の差異は生じません。 ※生成されるアセンブラはイメージです。実際にはコンパイラによって生成されるコードは異なります。
クラスオブジェクトでオーバーライドされた演算子における前置きと後置きのコード生成を考える。
C++での記述
CFoo foo;
if (foo++ < 10) Hoge(foo)
インライン展開されるコード
CFoo tmp = foo;
foo.m_value.plus1();
if (operator < (tmp.m_value, 10))
{
  Hoge(foo)
}
C++での記述 CFoo foo; if (++foo < 11) Hoge(foo);
インライン展開されるコード
if (operator < (foo.m_value.plus1() , 11)) 
{
  Hoge(foo)
}
CFooの実装は以下のようになる。
struct CValue {
  CValue & plus1();
}
bool operator < (const CValue&, int);
struct CFoo {
  CValue m_value;
  CFoo() {}
  bool operator < (int n) { return m_value  < n; }       
  CFoo& operator ++(int) {
    m_value .plus1();
    return *this; 
  }
  CFoo operator ++() {
    CFoo tmp = *this;
    m_value .plus1();
    return tmp;
  }
}
前置き++時のデメリット
CFooのオブジェクトの生成の追加 CFooオブジェクトの代入(コピー)の追加(インライン展開されない場合は2回発生する) コード量の増加 最適化コストの増加